2011年7月14日木曜日

邂逅 その1 〜「RADIATION MISSA」/三枝成彰

昔気に入っていた曲が余りにマイナー過ぎて、CD化されていない…
と言う経験は、誰しもあるかと思います。
かく言う私も十代の多感な頃に多大な影響を受けたにも関わらず
一般受けする様なアルバムでないために、CD化は無いだろうと
諦めざるを得ない作品が多々あります。
レコード盤では所持しているものの、プレーヤーが壊れて聞けないと言う
悲しい状況なのですが、それでもやっぱり今でも聞き返したいアルバムが
幾つかあります。

先日、たまたまAmazonで検索していたところ、
「こりゃ絶対CD再販は無いだろう」と思い込んでいたアルバム3枚を発見!
いずれも絶版なのでプレミア価格でしたが、これを逃したら二度と再び
巡り会えそうにないものばかりで、気づいたら3枚ともポチってました。
いずれも私が音楽制作を始める前〜制作初期の頃に非常に影響を受けた
アルバムです。

まずはその1


「RADIATION MISSA」/三枝成彰+DKW57349

1981年 作品。
1986年 CDにて再販。(現在は絶版)
作曲/三枝成章(現:成彰)
演奏メンバー:
キーボード 難波弘之(センスオブワンダー)
向谷実(カシオペア)倉田信雄(スタジオプレーヤー)
中村さとし(アレンジャー)
ドラムス 岡井大二(スタジオプレーヤー)
ボコーダー 森本恭正

三枝成彰が三枝成章名義時代に発表した斬新な切り口の「ミサ」組曲。当時第一線でハイテクニックなプレーヤーがこの曲のためだけに「DWK-57349」というユニットを組み、この難曲に挑んだ。さらにレコーディングと同内容でのライブも行われている。あえてポピュラーミュージックのプレーヤーに現代音楽を演奏させる事により、変則拍子や調性の希薄な難解な曲を力強いビートの上に、ボコーダーによる早口のラテン語が加わるという、これまでに無い斬新で挑戦的なアルバム。初期の三枝成彰氏の作曲・創造へのあくなき前衛性と現代音楽の閉塞感のジレンマが生み出した異形の音楽と言えるだろう。モノラルシンセサイザーとボコーダー、ドラムスだけというほぼ無謀とも言える構成を名うてのミュージシャンが見事にこなすチャレンジ精神には頭が下がります。
現在はオペラ作曲やクラシック音楽会のプロデュースなどスマートで叙情的な仕事ぶりからはうかがえない、正に「裏・三枝成彰」とも言える貴重なアルバム。
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当時氏は現代音楽の「既成概念を打ち壊す」と言うスタンスと、より叙情的で調性の整った音楽との狭間で揺れ動いていた時代でした。そのジレンマの結果が、この様な異形のMISSA曲を生み出したと言えます。これまでのMISSA曲のイメージを全く変える為、わざわざロックミュージシャンを選んだと言うところにも、三枝氏の反骨精神がうかがわれます。
また当時トッププレーヤーの難波弘之と向谷実を同時に迎えるという、今からすればかなり豪華なユニットが作り出すサウンドは、三枝氏の1章節ごとにビートの変わる変則ビートを見事にダイナミックに演奏しています。当時珍しいボコーダーでラテン語を早口でまくし立てるのも非常に新鮮です。当時この作品を現代音楽ではなく、単にロックテイストのアレンジに流された音楽と揶揄されて、三枝氏が大変立腹してライブ後の座談会の椅子を蹴って帰ってしまったと言う逸話にも、当時の三枝氏の「ツッパリ具合」が伺えて、私個人はとてもユニークな作品であると思っています。でも三枝氏には触られたく無い「若気の至り」な作品かも。

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